YORIAI1-1-1 vol.2

YORIAI1-1-1 vol.2

「手間をかけて、生み出す布」

 語り部:土屋直人・坂田峰子(土屋染色工房・染色家)

 


 染色への道


冨田:

今回、青山とみひろでは、土屋先生と坂田先生との二人展を開催させていただきました。

土屋先生と坂田先生はそれぞれ作品も作られますし、また、ご夫婦一緒に土屋染色工房(NAE surface printing factory)としても活動されています。

お二人はどのような経緯で染色の道に入られたのでしょうか?

 

 

土屋(敬称略):

もともと服飾関係の勉強はしていました。でもその当時、会社に入ってもデザイナーは大体2年くらいで期限が切れてしまうって言われていて。

会社っていう風土も自分には合わないかなということもありましたし、そうした組織ではなくて、他に何か違う道がないかなと考えていたんですね。

そうした時に、芹沢銈介先生の弟子でもある染色家・四本貴資先生を紹介していただいたんです。ただ、すでに四本先生には弟子がいたので、そこでは弟子入りは出来ませんでした。

それで、四本先生ではなく、紹介していただいた長沼孝一先生の工房でお世話になることになりました。そちらで8年間働いて、その後に独立しました。

 

 

坂田(敬称略):

四本先生は、東京造形大学テキスタイルデザイン学課で染色を教えられていて、私はそこで学びました。

 

 

冨田:

そうだったんですね。お二人には恩師を通じたご縁があったんですね。

土屋先生は型染による染色作家、坂田先生は捺染での染色作家ということですが・・・

 

 

土屋:

型染作家ではなく、型絵染作家ですね。

もともと型染っていうのは、一般的に分業体制で行われていました。それが型染です。

ですが、意匠作りも含めてすべて型染の工程を一貫して一人が行うことを、「型絵染」と言います。

この「型絵染」という方法は、芹沢銈介先生が確立されて、芹沢先生はこの「型絵染」によって初めて人間国宝に認定されました。

 

 

冨田:

ありがとうございます。

お二人は芹沢銈介さんも会員でいらした国画会工芸部に所属されていますが?

 

 

土屋:

私たちはどちらも、自分の師匠が国画会に所属していたので、それで自然と国画会へ所属するようになりました。

よく皆さんに知られている公募展に、日展というものがあるかと思います。

日展は歴史もありますし、またヒエラルキーもしっかりしていて、評価される作品は、技術の良し悪し、細かさという部分が重く見られます。日展から派生したような様々な公募展もあります。

一方で国画会は、日展系に属する団体とは異なる団体で、作品の選考は、会員による多数決で決まります。

また、評価されるところも、作品の技術の正確さや細かさといったことよりも、その作品が人を感動させるかどうか、そういった点が重要視される傾向にあります。

 

 


二人で作り上げる世界に1つだけの作品


冨田:

今回展示された作品についてご紹介していただけますか?

 

 

坂田:

捺染で染めている作品は私の作品です。型染されている作品は、土屋の作品です。

また、今回販売しているブラウスなどの服、これは私たち2人の合作になります。

NAE factoryというタグが付けられていますが、このNAEというローマ字は、私たち2人の名前が持っているローマ字を組み合わせて作ってます。

まだ一緒になってすぐのころでしたから、そういうネーミングをしたんですね。(笑)

 

 

冨田:

お二人で一緒につくられているということですが、具体的にはどのように作られてるんでしょうか?

 

 

坂田:

私がまず生地を選びます。そして、そこから色や形などを考えます。土屋が作ったどの型紙で、この生地を染めようかな、と考えるんです。

なので、土屋が型染は行っています。土屋の型染に対しては、尊敬してますし、信頼しているんです。

お願いできそうだな、というタイミングを見計らって、土屋に型染を依頼します。(笑)

 

 

 

冨田:

なるほど、坂田さんが取り仕切っていらっしゃるんですね。(笑)

生地選びはどのようにされるんですか?

 

 

坂田:

私は素材が本当に好きなんですよね。生地を見つけるために、いろんなお店をまわります。

素材を選ぶときは、両手を空けて、最低限の荷物だけをもって、気合を入れて選びます。

目をつぶって素材に触れて、それを体にまとうことは出来ないけれど、手や腕で触ってみて、この素材を身につけたいかどうか考えます。

触り心地だけじゃなくて、生地の重さも見て購入するんです。触れば、だいたいのことがわかりますから。

これは綿100%だけじゃなくて、化繊がはいってるんじゃないか?とか。だから、すごく素材にはこだわっています。

生地選びは、朝から晩までやっていてもまったく飽きませんね。

そうやって触っていると、土屋が彫ったどの型紙を使って、何色で染めようかと、色々とイメージが湧いてくるんです。

 

 

冨田:

そもそも服を作り始めたきっかけはなんだったんですか?

 

 

坂田:

私たちが結婚する時、やっぱり周囲からは染色だけでどうやって食べていくのかなんて心配されていたんです。

土屋も独立して、布を販売するっていうことをやっていましたが、それだけではなかなか売ることが難しかったですし。布ってどう使うの?というような。

そんな結婚して間もない頃、私の祖母が、80歳近くなってましたが、江ノ島の花火を見たいといって土屋と私の家に遊びに来てくれました。

祖母は、私が土屋と一緒になったことをとても喜んでくれた人でした。生地とか、そういうことがとても好きだったんです。

 

それで、祖母は私たちの家の中にあった型絵染の切れ端などを見つけて、これをもらっていいかと聞かれて。

土屋に聞いたらいいよというので、渡しました。そしたら、次に祖母に会った時に、服にして着ていたんですよ。

祖母は、その服を本当によれよれになるくらいまで着てくれていました。亡くなったとき、棺に入ったときも着てくれていました。

もっと違う着物とかのほうがいいんじゃないか、と家族には言ったんですけど、この服がとても好きだったからと言われました。

 

 

冨田:

素敵なお話ですね。おばあさま、とても大切に着られていたんですね。

 

 

坂田:

そんなことがきっかけになって、制作した布を人々に届ける手段として、ブラウスなどの服をつくることを始めたんです。

母が裁縫のできる人だったので、母に習いながら、最初は試行錯誤して自分でも縫って作っていました。

次第に、色々なところから声もかけていただけるようになったので、プロの方にお願いするようになりました。

百貨店なんかで出展するには、すごく縫製のチェックは厳しいですからね。

そのうち、私自身も目が肥えてきて、この人は縫製代が少し高くても上手だからまたお願いしようとか、そういうことが分かるようになっていきました。

 

 

土屋:

最近は少し数減りましたけど、年に250-270着は作ってるかな?

 

 

冨田:

それはすごいですね!

 

 

坂田:

もうかれこれ、35年間くらいずっと作り続けてますね。

みなさん驚かれるかもしれないんですが、35年前と変わらない値段で売っているんですよ!

 


制作へのインスピレーション


冨田:

型絵染の工程について簡単に教えていただけますか?

 

 

土屋:

まず自分で考え描いた図案(デザイン)を渋紙に写し取って、それを彫って型紙を使ります。

そのあと、その型紙を布の上において、防染糊を置いていきます。

布に糊を置いた後、染液を付けた刷毛で引き染めをします。

次に、この布を蒸し器の中にいれて、蒸します。これは染料を布に定着するための工程です。

実はいま工房で使っている蒸し器は、私が自分で作りました。作れるものはなんでも自分で作ってますよ。

その工程が終わったあと、水元という作業をします。水洗いをして糊や、つかなかった染料を水洗いで落とす工程です。

糊が落ちきるまで繰り返し作業をします。

 

 

和司:

とても手間をかけて、制作なさってるんですね。

創作にあたって、どんなことがインスピレーションになっているんでしょうか?

 

 

土屋:

やっぱり頭で色々と考えてもダメで、たしかにそういう時間も大事ではありますが、やっぱり手を動かしているとアイデアがでてきますね。

なのでデザインを考える時はいつも手書きです。

らくがき、そうしたものからデザインを起こしていって、実際に型紙を削りながら完成させていきます。

やっぱりここはこうした方がいいなと思ったりして、手を動かしながらです。作業していないと、生まれないですね。

以前コンピューターを買って、それでやってみようとしたけど、全くダメでした。(笑)

 

 

坂田:

ときどき家のなかに紙切れがおちたりしてて、そこにスケッチがあったりすると、あ、これは土屋のだなと思って。

そういうのは捨てずに、机の上においたりしてます。(笑)

 

 

冨田:

坂田先生はいかがですか?

 

 

坂田:

私もコンピューターはつかいません。国画会に出展する時は制作に数ヶ月かけるんですが、デザインがやはり一番大変です。もう何年もやってきているのに、それは変わりません。

私の場合は過去の作品やスケッチブックを横においておいて、それらを眺めながら考えることが多いです。大作を作るには、本当にエネルギーがかかります。

よし、今日はやろう、と思って時間を作ってもなかなか簡単にはいかない。

でも辛くてもそうした制作をやっておくと、帯のような、商品として出すようなものも、ちゃんと作れるようになるんですね。

 

 

冨田:

そうなんですか。

 

 

坂田:

あと、五感を感じられるような身体を作っておいうことも大事ですね。

味わうとか、感じるとか、例えば今日のこの空気は、じめじめした湿気だなとか、そういう日常の様々なことを、しっかり自分の身体で感じられるようにしておくということですね。

いろいろなことを感じれる状態にしておくと、自然と、作品を作りたいなという気持ちでうずうずしてくるんです。

 

 

 

冨田:

土屋先生にしても、坂田先生にしても、やはり身体の使い方ということが重要なんですね。

 

 

土屋:

身体というか手や足ですね。身体は動かさずに軸はしっかりとさせていないといけない。

釘を一本うつのにも音があります。機械で釘を打つと、それこそ単調な音しか聞こえてきませんが、人が作る過程ででてくる音は、とても美しいんです。

染色においても、水元で作業しているときなんか、やはり音がする。そしてその音で、その人が上手く仕事ができているかどうかもわかるんですよ。

遠くで水洗いしていても、その音でわかるから、「ちがーう!」て声かけたりしちゃいます。

 

 

 

 

 


これからの手仕事


質問:

素敵なお話ありがとうございました。真摯なものづくりの姿勢に感動しました。

お二人に質問なんですが、先生方の技術を次の世代につなげるということについては、どのようにお考えですか?

 

 

土屋:

昔と比べて、今はなかなか、こうしたものが売れる時代ではなくなってきたように思います。

私が工房で働いていたころは、たくさんの発注があって、作れば売れるという時代もありましたが、今は同じようにはいかないですね。

これまで私たちは、講座などの教室を通して、長くにわたって型絵染を生徒さんたちに教えてきました。

私たちの講座では作り方のコツなんかも全部教えてしまっているんですよ。(笑) その中から2-3人の方が独立して、染色家としてやられている方もいます。

そうした人たちが生まれてくることが、次の人たちにつなぐという方法なのかなと思ってます。

 

 

坂田:

最近の若い方々とお話していると、「坂田さんたちのように服が売れるようになるには何年ぐらいかかりますか」なんて聞かれるのですが、

私たちが染色を始めたころは、そうしたことは考えられないことでした。

先生から作品が認められて、やっと「国画会に出してみてはどうか」「個展をやってみてはどうか」と言っていただいけるといった具合でしたから、

最初から何年たてば売れるようになるかとは考えもしなかったですし、聞けることではありませんでした。

染色と向き合う姿勢が、今の時代と私たちの時代では大きな違いがあるようにも思います。

 

 

質問:

昔ほど売れるものではないということですが、昨今は、手仕事のものや、大事に作られているものって、

逆に見直されてきているようにも思っていたのですが。

 

 

土屋:

たしかにインターネットなどの力はすごくあります!それはすごいです。

うちの教室なんか、近くの人たちより、インターネットを見て遠くからわざわざ通ってくれている生徒さんが中心です。

私が型染の本を出したんですが、そうした本を検索して、うちの工房をインターネットで見つけてくださって。

今、2週間に1回、釧路からスーツケースを引きずって通ってくれる人もいます。本当に遠くから来てくださる方が最近多くなりましたね。

不思議と、誰かお辞めになると、誰かまた新しい生徒さんが入られて。そうやっていつもいい人数でうまく回っているんですよね。

 

 

 

冨田:

インターネットの力などによって、先生たちのものづくりの魅力を感じている人は、全国どこからでもいらっしゃるんですね。

YORIAIでは、この時代における手仕事の価値などを考えていきたいと思っていますが、こうした活動を通じて、

もの作りの魅力を感じている人が、色々な所から集うような場を作っていきたいと思っています。

今日は、本当にありがとうございました!

 

 

 

 


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次回予告

YORIAI 1-1-1 VOL.3
7/6 (FRI)昼の部15:30~/ 夜の部19:00~

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衣食住を楽しく彩るためのモノづくりをしている様々な方々に、青山とみひろ店長 冨田和司が、

それぞれのストーリーを尋ねながら、手仕事のこれからについて寄合形式で考えるプロジェクト「YORIAI1-1-1」。

1-1-1とは「青山とみひろ」が青山1丁目1番地1号に位置していることに因んでいます。

第3回目は、ファゴッティングレース作家の伊藤眞砂子さんを語りべにお迎えし、

レースの歴史や技術、魅力についてじっくりお話を伺います。

※ YORIAI1-1-1は、ずっと大切に使うためのモノづくりを大事に考えています。

当日は、是非あなたの”大切なモノ”を身につけて起こしください。そのストーリーを是非教えてください。

 

イベント概要

日 時:7月6日(金) 第一部 13:30~15:30/ 第二部 19:00~21:00

場 所:青山とみひろ(東京都港区 南青山1-1-1 新青山ビル西館1F

※青山一丁目駅(東京メトロ銀座線・半蔵門線、大江戸線)直結のビル1Fです。

入場料:

事前予約:1500円 (1ドリンク、おつまみ付) ※7日迄のお申込を、事前予約とさせて頂きます。

当日受付:2000円 (1ドリンク、おつまみ付)

 

お申込:青山とみひろ→ TEL :03-6804-1051       Mail: t.aoyama@tomihiro.co.jp


ワークショップのご案内

「レースの花柄ストラップづくり」

 

伊藤先生指導のもと、自分だけのレースの花柄ストラップをつくり、

その魅力を体験していただけます!

日時:7月12日(木)13:00~16:00  *(進行状況によって13日も追加開催いたします)

場所:青山とみひろ(東京都港区 南青山1-1-1 新青山ビル西館1F

参加費:6,500円(講習費5,000円 材料費1,500円)

参加申込期限:7/11(水)15:00迄

お申込:青山とみひろ→ TEL :03-6804-1051       Mail: t.aoyama@tomihiro.co.jp


 



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