野州麻 〜日本一のブランド麻収穫を見学〜

野州麻

〜日本一のブランド麻の収穫見学〜


◆◆◆

7月末、日の出と共に辺りの山から霧がのぼり始める頃、
栃木県鹿沼市にある「野州麻(やしゅうあさ)」畑へと向かっていました。

栃木県で栽培・生産された麻を野州麻(やしゅうあさ)といいます。
同県は質量ともに日本一の麻の生産地と
して知られています。野州麻は光沢があり、
薄くしなやかで、丈夫なのが特徴です。

細く真っ直ぐに伸びた麻。高さ2m60cm近くある。
細く真っ直ぐに伸びた麻。高さ2m60cm近くある。美しい。。。

5月に種が撒かれた野州麻は、100日後、真夏の時期に刈り取りをします。
日中の暑さを避けて、作業は比較的涼しい早朝から昼にかけて行われます。

私が畑に到着した頃には、既にその日の刈り取りは終わっており、ちょうど刈り取った麻をおよそ同じ長さ(7尺=約265cm)に整え、束ねて運び出す作業をしていました。

長い日では1日12〜13時間も働かなければならないという此の時期、大森さんら農家の方々の肌は黒々と焼け、体中から汗を吹き出しながら、ひたすら黙々と作業をするのでした。


◆◆◆

古来から続く麻文化

 

「野州麻」と呼ばれるこの麻ですが、実はこの麻は「大麻」の一種です。
(ただし、もちろん品種改良され、毒性はありません。)

そのため、昭和23年(1948)の大麻取締法の制定により、
県内では17件の農家しか大麻の栽培が認めなくなってしまいました。

現在では、「大麻」という言葉に対するネガティブな印象があります。

しかし、もともと日本における麻は、古来より穢れを祓う神聖な力があるとされ、
野州麻は全国の神社の注連縄などに用いられてきたものなのです。
大相撲の横綱が付ける「横綱」にも、野州麻が使われています。

麻の実は食用として
繊維は衣料や住宅の建材として
麻は古来から、日本人の衣食住あらゆるものに使える万能植物。
日本人にとって切っても切れない植物なのだと知りました。

白鵬関が実際に締める横綱は、大森さんの野州麻が使用される。
白鵬関が実際に締める横綱は、大森さんの野州麻が使用される。

 


◆◆◆

日本一の麻産地

大森家は、1853年初代大森半右衛門が麻農家をはじめました。
そして現在、大森由久さんが6代目にあたります。

明治時代、帯刀禁止令により、全国で多くの刀鍛冶が衰退していきました。
しかし、栃木県では違いました。

なぜなら、ここ栃木県では、麻の収穫に不可欠な「御切り棒」と呼ばれる道具があったため。
(御切り棒:麻の枝葉を切る際に使われる道具)

この一帯の刀鍛冶は、麻農家の御切り棒の製造で食べていけたとそうです。
それほど、麻畑がたくさんあったことを物語っています。
大正時代に入っても7000haもの麻畑があり、
大森さんが小さな頃は見渡す限りの大麻畑が広がっていたと言います。

大森さんの使用する御切り棒。写真では見えにくいが、刃の質の良さを証明する刻印がされている。
大森さんの使用する御切り棒。写真では見えにくいが、刃の質の良さを証明する刻印がされている。

 

◆◆◆

野州麻栽培の難しさ

畑の一番外側の一列だけ残されている・・・なぜ?
畑の一番外側の一列だけ残されている・・・なぜ?

 

収穫後の畑を見て不思議な点が…。一番外側の一列だけ残されていました。

動物の侵入から防ぐ柵の役割かと思っていましたが、実はこれらの外周にある麻は、日光を浴びすぎてしまい、枝が増え、繊維も太くなってしまうので、使えないのだそうです。

大森さんには麻糸の用途によって、異なった麻の繊維の太さの注文がやってきます。
では、どうやって異なる繊維の太さの麻を育てるのか。

それは、撒く種の間隔を変え、陽のあたりを調節することで、
注文のある麻の太さに対応するのだそうです。

大変失礼ながら、麻は日本中で栽培可能と聞いたため、
栽培は容易なものと想像していました。

しかし、「そうではない」と、大森さん。

一区画あたり約7〜8万粒もの麻の種を撒きます。陽のあたり方によって、
麻繊維の成長が多くき変わるため、種の蒔き方には物凄く気を使うのだそうです。
また、毎朝畑に出ては、成長具合を見て、水遣りなどを微妙に調整しなくてはなりません。
これらはすべて長い経験と知識がなければ出来ないのです。

太さの異なる麻。注文によって麻の太さを調節して栽培している。
太さの異なる麻。注文によって麻の太さを調節して栽培している。

 

「多くの先人のおかげで、こうして高品質な麻が収穫できるのだ」と、
“先人への感謝“の言葉。
そんな大森さんの言葉から、麻農家としての誇りと麻への愛情が滲み出ていました。

大森さんは、日本麻振興会の理事長。現在、会員16,000人。 「今年は良い出来」という大森さん
大森由久さんは、日本麻振興会の理事長。現在、会員16,000人だという。「今年は良い出来」と嬉しそうに微笑む大森さん。

◆◆

次世代へ継がれる麻

永く日本人の衣食住に欠かせない植物として育てられてきた麻。
その麻作りのすべてを6代目大森由久氏は、また次世代へと引き継ぐ。

7代目にあたる大森芳紀氏は、野州麻の栽培のみならず、
もっと多くの人に野州麻を知ってもらえるよう精力的に動いておられます。

麻繊維を混ぜた和紙の製作を修行し、野州麻紙工房を立ち上げた。工房横のカフェも自作で建てたというパワフルな方です!
麻繊維を混ぜた和紙の製作を修行し、野州麻紙工房を立ち上げた。工房横のカフェも自作で建てたというパワフルな方です!

 

大森さんのご自宅敷地内には、
古民家を改築したカフェ、野州麻紙工房、天然酵母のパン工房が立ち並ぶ。

驚いたことに、この古民家カフェは、骨組み以外はなんと芳紀氏のほぼ自作だそうです。
また、隣接する麻紙工房では、自ら和紙づくりの修行にでて、
麻紙(麻を混ぜ込んだ和紙)づくりの技を取得したといいます。
・・・大変パワフルで達者な7代目。

また、お母様が営む天然酵母の手作りパン工房もあります。
麻の実を練り込んだパンはもちろん、30〜40種類はあろうかというバラエティ。
自分の悪い癖で、これだけ作って毎日売れるのだろうか…と心配になってしまうのを他所に、
次々とお客様が入っていました。ふと道路から見逃しそうな所にある工房ですが、
連日多くの方が訪れる評判のスポットのようです。


◆◆◆

いい旅でした。

この野州麻畑、この収穫時期以外はどうするのかと聞きましたら、
秋は「蕎麦」畑になるそうです。

・・・。

秋も来ます。

秋に来ます。
秋に来ます。

◆◆◆


◆銀座とみひろ◆

東京都中央区銀座5-8-20 銀座コア5F
TEL: 03-6274-6034

2件のコメント

  1. とても素晴らしい記事をありがとうございます。
    私も麻文化の復活を祈るひとりです。
    「お祓い麻ほうき」を作りました。

    1. M.Rosemaryさん、コメントありがとうございます。
      (ブログ不精のため、大分返信が遅くなってしまいました)
      誤った社会の理解によって、麻に関わる大事な文化が衰退するのは大変残念なことです。
      「お祓い麻ほうき」ぜひ私も作ってみたいと思います。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です