黒いピアノは漆工藝?

今回、漆工芸作家の杉本晃則先生から色々なお話を聞き、
「自分が漆工芸について殆ど何にも知らなかったこと」を知りました。

身近で言うと、「ピアノはもともと漆が塗られていた」んだそうです!確かに学校のピアノは漆黒だ。(ちなみに、海外では主にピアノは木目の見えるものが多いそうです。もっとも現在の黒ピアノは殆どが化学塗料のようですが。)

正直なところ、しばしば「漆塗り」と一般に耳にしていましたので、(恥ずかしながら)てっきり家具にニスでも塗るように、木の器等に漆を塗るものかと思い込んでいました。

しかし、実は、漆器が出来るまでは、大変な時間と労力に加え、修行を積んだ高い技術が隠されていました。
表には美しい形や文様しか見えない漆工藝。
そんな美しさに隠された手間と技について、杉本先生にお聞きしました。
(聴きながら描いたイラスト ▽▽)

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まず、写真の蒔絵が施された棗(ナツメ)、元の土台は紙コップ(!)ほどの薄い木材質の器が使用されるのだそうです。
「木は湿度や温度によって動きますので、分厚い土台を用いると、合口の部分に歪みが生じ、蓋が開閉しにくくなる原因になってしまいます。
廉価に売られているものは、こうした分厚い木材を使うため、使っているうちに歪んできてしまうんです。」
ただ、こうした言わば「廉価品と、しっかりと作られている品物の見分けをつけるのは職人でも難しい」と言います。

蒔絵棗 杉本晃則 次に、木の土台の上に、麻布や和紙(この棗の場合は和紙)を貼ります。

その上に次は、2種類の下地を重ねていきます。
第一層は粒子の粗い「地ノ粉(ぢのこ)」。そのから、粒子の細かな「砥ノ粉(とのこ)」という下地がのります。
これらの下地が出来上がると、「中塗り」の層を重ねます。

この層まで、言葉では実にアッサリと説明してしまいましたが、
杉本先生曰く、実はこの中塗りまでが非常に大変なのだそう。その後の蒔絵の作業などは、比較的難しくはないのだそうです。その苦労は、完成品には現れないのですが。。。

中塗りが終わると、金粉や螺鈿の細工を施し、その上から「上塗り漆」を重ねます。(イラスト左側)
既に書きました通り、漆工藝は、「塗って」柄を出しているのだと思いきや、実際は、塗った漆の層を「研ぐ」ことで、柄を浮き出していくものだったのです(!)。
この「研ぎ」によって、金粉の粒子が磨かれて輝くので、ただ塗るだけでは、写真のような金の光沢は出ないのだそうです。

漆塗り盃 杉本晃則
この盃一つに、漆工藝の技術が全て入っているそうです。

こうした作業は、もともと分業制で、層によって職人が違っていたのだとか。
木の土台を作る職人、下地と中塗りまでを専門とする職人、上塗り師、漆表面の艶出しをする呂色師、など。。。
今では、着物業界と同様、需要の減少とともに、それら職人の数も激減。
(上塗り師に関しては、京都ではもはや一人だそうです。)

杉本先生は、あまり積極的に話さないタイプ。(ご自身もそう言っていました。)
しかし、ひとたび漆の話をすれば、漆への想い、仕事への真剣さと自信が伝わってきます。
将来の漆工藝を担う杉本先生にとって、順風とは言えない漆工藝界の現状は、逆に「漆工藝の魅力を多くの方に伝えたい」「新たなものに技を応用したい」という正エネルギーの源になっているようでした。

この波状の隆起は「彫り」ではなく、「漆を薄く塗り重ねられて」作られたそうな。気が遠くなります。
この波状の隆起は「彫り」ではなく、「漆を薄く塗り重ねられて」作られたそうな。気が遠くなります。

そんな杉本晃則先生は、これからも良いものを作り続けながら、漆工藝の魅力を広めていって下さるでしょう。

銀座とみひろ

 

銀座とみひろメンバーも、漆帯留づくりを体験させて頂きました。大変楽しかったです!
銀座とみひろメンバーも、漆帯留づくりを体験させて頂きました。大変楽しかったです!

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