染織工芸では、染めから織りまでの全ての工程を職人の手作業で行っています。機械なら3日も経たず織り上がりますが、敢えて数ヶ月もの時間をかけて手織りし、肌に触れたときの温もりと風合いを大切にしています。
山形の自然の恩恵を染料に

職人自ら染料の材料を採取に、山へ入ります。材料は、桜、梅、椿、笹、藍など季節を代表する草木から、紅花、ラ・フランス、さくらんぼ、林檎といった山形ならではの素材まで、種類も様々です。
採ってきた材料を細かく裁断し、時間をかけて鍋で煮出していきます。自然からいただく色は、思うように染まらないこともしばしば。丹念に1回、2回と重ねて染めていきます。

染め上がると、日陰で干し、色を確認します。同じ材料を使っても、採取する季節や場所、媒染などの条件が異なれば、染め上がった色にも違いが生まれます。
そんな自然に翻弄されることもありますが、それも草木染の楽しさであり、草木染にしかない魅力です。
手織りだからこそ表現できる温もりと風合いを大切にしています

経糸に使用する本繭を紡いだ細く滑らかな絹糸と、緯糸に使用する玉糸やくず繭から紡いだ、太さに均一性のない独特な風合いを持つ紬糸を、草木の旬の時期に合わせてあらかじめ染色しておきます。

基本的に受注生産はしていないため、職人たちが独自の発想と研究のもと、ストックしておいた糸同士を合わせしながらデザインを考えていきます。 四季折々の山形の豊かな自然も、織り手の創作意欲を刺激し、より深く、温かみのある製品づくりへと繋がっています。

染織工芸では、約1ヶ月かけて一反を職人自らの手で織り上げています。 機械織りはせず、時間をかけてでも手織りにこだわるのは、着れば着るほど身体に馴染む心地良さ、そして職人の手から生まれる手織りならではの温かさを大切にしているから。 昔ながらの木製の織り機を、自らの感覚に合うように微調整しながら、一本一本糸を織り込んでいきます。

織りは、力加減を一定にしながら、長時間それを保ち続けていくことが求められます。ひとたび力加減を誤れば、そこが織りキズとなってしまい、これまでの労力が台無しになってしまいます。そんな職人の緊張感も漂うなか、工房では日々トントンという心地よい機(はた)の音が響いています。